労働災害を防ぐには、災害の原因を把握→リスクアセスメントを起点に具体策を講じることが必要です。
死亡災害は減少傾向にある一方、休業を伴う災害は高止まりしており、業種を問わず全ての企業に対応が求められています。
┃労働災害の主な原因

労働災害を防ぐには、まず「何が原因で起きているか」を知ることが出発点になります。
その原因は大きく3つに整理できます。
原因① 転倒・墜落など「動作」に起因する災害が最も多い
休業4日以上の死傷者数のうち、事故の型別で最も多いのは「転倒」、次いで腰痛等の「動作の反動・無理な動作」や「墜落・転落」です。
危険な機械や現場でなくても、日常動作の中で発生する災害が大半を占めています。
原因② 業種によってリスクの中身が異なる
死亡災害は建設業、製造業、陸上貨物運送事業の順に多く、事故の型は「墜落・転落」「交通事故」「はさまれ・巻き込まれ」が中心です。
一方、休業4日以上の死傷者数では製造業・商業・保健衛生業が上位を占め、業種によって「命に関わる災害」と「発生件数が多い災害」の傾向が異なります。
商業(小売業など)は死亡者数・死傷者数がともに前年より増加している唯一の主要業種であり、注意が必要です。
原因③ 高年齢労働者・非正規雇用者への対応の遅れ
50歳以上の労働者の労災は全体の半数以上、60歳以上でも約3割を占めるとされ、加齢に伴う身体機能の低下が転倒・墜落災害の一因となっています。
また、パート・アルバイトなど非正規雇用者への安全衛生教育が手薄になりがちな点も、第14次労働災害防止計画で課題として指摘されています。
┃具体的な防止策

原因が「動作」「業種特性」「特定の労働者層」に整理できることを踏まえ、企業が取るべき対策は次の4つに集約されます。
1. リスクアセスメントで自社の危険源を洗い出す
リスクアセスメントは、労働災害防止のすべての土台になる取り組みです。
職場に潜む危険性・有害性を特定し、リスクの大きさを見積もったうえで、優先順位をつけて対策を講じます。
✅危険性・有害性の特定
✅リスクの見積り
✅低減措置の検討(本質的安全化 → 工学的対策 → 管理的対策 → 保護具の順で優先)
✅対策の実施・記録
✅再評価
全業種において労働安全衛生法第28条の2に基づく努力義務です。
新規作業の開始時や設備・作業方法の変更時には必ず実施し、それ以外でも年1回以上の見直しが推奨されます。
専任の安全担当者がいない中小規模の事業場でも、厚生労働省が公開する簡易版シートを使えば着手できます。
危険度の高い作業から始めるのが現実的です。
2. 熱中症対策は「体制」で備える
熱中症を生ずるおそれのある作業を行う事業者は、体制整備が法律上の義務です。
WBGT値28℃以上または気温31℃以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超える作業を行う場合、以下が義務付けられています。
📌熱中症の自覚症状・疑いがある作業者を早期発見し、報告させる体制の整備
📌重篤化を防止するための応急処置・搬送手順の作成
📌関係作業者への周知
違反した場合、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
屋内外を問わず対象になるため、工場内の高温作業なども該当する可能性がある点に注意してください。
3. 高年齢労働者に配慮した職場づくり
転倒・墜落を防ぐには、設備と健康管理の両面からの対応が必要です。
特に高年齢者の特性に配慮した措置が、事業者の努力義務として明文化されます。
設備……通路の段差解消、手すりの設置、照度の確保
健康管理……健康・体力状況の把握と、それに応じた作業内容の調整
教育……安全な作業手順の周知徹底
厚生労働省が無料で公開している「エイジアクション100」チェックリストを使えば、自社の対応状況を手軽に点検できます。
4. 安全衛生教育を「正社員以外」にも広げる
注意喚起を徹底するだけで防げる災害が多いため、雇用形態を問わない教育の仕組み化が有効です。
特に第三次産業ではパート・アルバイト従業員への教育が手薄になりがちですが、雇用形態にかかわらず、入社時教育と継続的な啓発を制度として組み込むことが重要です。
┃よくある質問
Q1. 熱中症対策は、屋内作業でも義務化の対象になりますか?
なります。屋内外を問わず、WBGT値28以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超える作業を行う場合を対象としています。
工場内の高温作業などでも該当する可能性があるため、事業場ごとの確認が必要です。
Q2. 熱中症対策を怠った場合、具体的にどのような罰則がありますか?
労働安全衛生法第119条に基づき、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
両罰規定により、行為者だけでなく法人にも同額の罰金が科される点に注意が必要です。
Q3. リスクアセスメントは法律上の義務ですか?
全業種において労働安全衛生法第28条の2に基づく努力義務とされています。
ただし、一定の危険・有害な化学物質を取り扱う事業場については義務化されており、業種・取扱物質によって扱いが異なります。
Q4. 中小企業でもリスクアセスメントに取り組めますか?専任の担当者がいなくても可能ですか?
可能です。厚生労働省は専任の安全担当者がいない中小規模の事業場向けに、簡易版のシートや手引きを公開しています。
まずは危険度の高い作業から着手する方法が現実的です。
Q5. パート・アルバイトにも安全衛生教育を行う義務はありますか?
雇用形態にかかわらず、労働者を使用する事業者には安全衛生教育を行う義務があります。
特に第三次産業では、パート・アルバイトへの教育が手薄になりがちな点が、第14次労働災害防止計画でも課題として指摘されています。
Q6. 労働災害が発生した場合、企業が負うコストにはどのようなものがありますか?
治療費・休業補償・障害補償・遺族補償などの直接コストに加え、対応にあたる従業員の人件費、生産の遅れ、企業イメージの毀損といった間接コストが発生します。
間接コストは直接コストより大きくなるケースも多いとされています。
┃まとめ
労働災害の原因は「転倒・墜落など日常動作」「業種特性」「高年齢・非正規雇用者への対応不足」の3つに整理できます。
これに対応する具体策は、リスクアセスメント・熱中症対策・高年齢者対策・安全衛生教育の4つです。
労働災害防止は一部の部署や現場任せにする話ではなく、企業全体で取り組むべきテーマです。
まずはリスクアセスメントの見直しから、着手してみてはいかがでしょうか。

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