「正社員として働きたいけれど、入社してから後悔したくない」「採用のミスマッチを防ぎたい」——そんな求職者と企業双方のニーズに応える仕組みが「紹介予定派遣」です。

一定期間は派遣スタッフとして働き、双方が合意すれば直接雇用へ移行するというユニークな制度ですが、メリットだけでなく知っておくべき注意点もあります。

本記事では、求職者側・企業側それぞれの視点から、紹介予定派遣のメリット・デメリット、そして気になる手数料や試用期間の扱いについて詳しく解説します。

目次

紹介予定派遣とは

紹介予定派遣とは、派遣期間終了後に派遣先企業との直接雇用を前提として、派遣スタッフを送り出す制度です。

派遣期間中の雇用主は派遣会社ですが、双方が合意すれば派遣先企業の正社員や契約社員として直接雇用に切り替わります。

一般的な派遣(登録型派遣)との大きな違いは2つあります。

📌派遣期間の上限が最長6か月(一般派遣は最長3年)

📌就業前の面接・書類選考が可能(一般派遣では原則禁止されている「派遣先による事前選考」が、紹介予定派遣では例外的に認められている)

つまり、通常の中途採用に近い選考プロセスを経ながら、実際に働いてみたうえで採用の可否を判断できる、いわば「お試し就業」に近い仕組みだといえます。

【求職者向け】紹介予定派遣のメリット

1. 入社前に職場を体験できる

最大のメリットは、直接雇用される前に実際の業務内容や職場の雰囲気を体感できることです。

社風・人間関係・残業の有無・休みの取りやすさなど、面接や求人票だけではわからない「生の情報」を得たうえで、自分に合うかどうかを判断できます。

2. 入社後のミスマッチを防げる

働いてみて「思っていた仕事と違った」と感じた場合は、直接雇用を辞退することも可能です。

退職ではなく契約終了という形になるため、心理的なハードルも比較的低く、早期離職のリスクを避けやすいのが特徴です。

3. 未経験の職種にも挑戦しやすい

書類選考だけで判断されるのではなく、実務での取り組み方やスキルをアピールできるため、未経験からでも正社員登用のチャンスを得やすくなります。

4. 条件交渉を派遣会社に任せられる

直接雇用時の給与や労働条件の交渉を、自分の代わりに派遣会社が行ってくれます。

条件面の交渉が苦手な人でも、精神的な負担を抑えながら転職活動を進められます。

【求職者向け】紹介予定派遣のデメリット

1. 必ず直接雇用されるとは限らない

紹介予定派遣は、あくまで直接雇用を「前提」とした仕組みであり、「保証」するものではありません。

派遣期間中の勤務態度や評価によっては、直接雇用に至らないケースもあります。

厚生労働省の令和4年度の調査によると、紹介予定派遣から直接雇用に切り替わった割合は約50~60%でした。

2. 選考の準備に手間がかかる

一般的な派遣と異なり、書類選考や面接が実施されるため、正社員応募に近い準備が必要です。

3. 直接雇用後の雇用形態や条件にギャップが生じることがある

直接雇用といっても、必ずしも正社員になれるとは限らず、契約社員としての雇用にとどまるケースもあります。

また、派遣中に聞いていた条件と直接雇用時に提示された条件が異なることもあるため、契約前に書面で確認することが重要です。

4. 求人数が限られる

一般の有期雇用派遣と比べると、紹介予定派遣の求人数は少なめです。

希望する職種や条件に出会うまで、時間がかかる可能性があります。

【企業向け】紹介予定派遣のメリット

1. 採用のミスマッチ・早期離職を防止できる

面接だけでは見抜きにくい実務スキルやカルチャーフィットを、実際の勤務を通じて見極められる点が最大のメリットです。

「入社後に期待していたパフォーマンスと実際の実力にギャップがあった」という事態を防ぎやすくなります。

2. 採用活動の負担を軽減できる

求人票の作成・応募者対応・面接日程の調整といった採用業務を派遣会社が代行するため、採用担当者の工数を削減できます。

3. 未経験者やポテンシャル層も見極めやすい

書類選考だけで人材を絞り込むのではなく、実際の働きぶりをもとに採用可否を判断できるため、経歴だけでは測れないポテンシャルを持つ人材を発掘しやすくなります。

4. 助成金の対象になる場合がある

派遣社員を正規雇用として直接雇用した場合、国のキャリアアップ助成金の対象となるケースがあります。

【企業向け】紹介予定派遣のデメリット・注意点

1. 費用が二重にかかる

紹介予定派遣を利用する企業は、派遣期間中に発生する派遣料金(月額)に加え、直接雇用が決定した際に紹介手数料を支払う必要があります(詳細は次章)。

直接雇用に至らなかった場合でも、それまで支払った派遣料金は返金されません。

2. 直接雇用後に改めて試用期間を設定できない

紹介予定派遣では、派遣期間そのものが試用期間の役割を果たすとみなされるため、直接雇用後に新たに試用期間を設けることは認められていません(詳細は後述)。

3. 利用できない業務がある

士業・医療関連業務・建設業務など、労働者派遣法上の「派遣禁止業務」には紹介予定派遣を活用できません(医療関連は一部例外あり)。

4. 大量採用や高度専門職の採用には不向き

紹介予定派遣は1人ずつ適性を見極める仕組みのため、スピード感のある大量採用には向きません。

また、高度な専門スキルを持つ人材やITエンジニアなどは、紹介予定派遣という働き方自体を希望しない傾向があるとされています。

5. 本採用拒否には合理的な理由が求められる

企業による直接雇用の見送りは、解雇ではなく「雇い入れの拒否」にあたるため、企業側の判断が広く認められ、解雇のような厳しい法的制限は適用されません。

ただし、労働者から請求があった場合は「不採用理由」を書面で明示する法的な義務があるため、企業側は評価基準を明確にし、面談などの記録を残しておく必要があります。

手数料の仕組みと相場

紹介予定派遣を利用する際、企業が負担する費用は大きく2種類に分かれます。

📌派遣料金

派遣期間中、毎月発生する費用です。派遣スタッフの給与や社会保険料、派遣会社の管理費などが含まれます。

📌紹介手数料

直接雇用が決定した場合にのみ発生する成功報酬型の費用です。

相場は「理論年収(想定年収)」の20〜35%程度が目安とされています(15〜30%とする例もあり、派遣会社ごとに料率は異なります)。

理論年収とは、採用予定者が1年間フルタイムで勤務した場合に支給される想定年収のことで、基本給の12か月分に賞与などを加えて算出されます。

たとえば、理論年収400万円の人材を手数料率25%で直接雇用した場合、紹介手数料はおよそ100万円となります。

これに加えて派遣期間中の派遣料金が別途かかる点に注意が必要です。

なお、手数料率は派遣期間の長さによって変動することがあり、派遣期間が短いほど料率が高く設定される傾向があります。

これは、派遣会社が本来得られるはずだった残りの期間分の収益を、手数料でカバーする必要があるためです。

試用期間に関する注意点

見落とされがちですが、押さえておきたいのが試用期間の扱いです。

厚生労働省の「労働者派遣事業関係業務取扱要領」および「派遣先が講ずべき措置に関する指針」には、紹介予定派遣により雇い入れた労働者について試用期間を設けないようにする旨が明記されています。

つまり、紹介予定派遣における最長6か月の派遣期間そのものが、実質的に試用期間の役割を果たしているという整理です。

企業側は、直接雇用後に改めて「様子見期間」を設けることはできないため、派遣期間内に評価基準を明確にし、定期的な面談や記録を通じて見極めを完結させる必要があります。

求職者側にとっても、直接雇用後に試用期間のような扱いを提示された場合は、制度上のルールと異なる可能性があるため、確認しておくとよいでしょう。

よくある質問

Q1. 紹介予定派遣とは簡単に言うとどんな制度ですか?

派遣期間終了後に、派遣先企業との直接雇用への切り替えを前提とした派遣の仕組みです。

最長6か月間は派遣スタッフとして働き、双方が合意すれば正社員や契約社員として直接雇用されます。

Q2. 紹介予定派遣は必ず正社員になれますか?

いいえ、必ず正社員になれるわけではありません。

厚生労働省の調査では、直接雇用に切り替わった割合は約50~60%となっています。

派遣期間中の評価によっては直接雇用に至らないケースもあります。

Q3. 紹介予定派遣の派遣期間はどれくらいですか?

最長6か月です。一般的な登録型派遣の最長3年と比べて短く設定されています。

この6か月間が、実質的な見極め期間(試用期間に相当)として扱われます。

Q4. 紹介予定派遣の手数料の相場はどのくらいですか?

直接雇用が決定した場合、企業は理論年収(想定年収)の20〜35%程度を紹介手数料として派遣会社に支払うのが相場です。

これに加えて、派遣期間中は月額の派遣料金も別途発生します。

Q5. 直接雇用後にあらためて試用期間は設けられますか?

設けられません。厚生労働省の指針により、紹介予定派遣で雇い入れた労働者について試用期間を設けないようにすることが定められています。

派遣期間そのものが試用期間の役割を果たしているためです。

Q6. 求職者側から直接雇用を辞退することはできますか?

できます。派遣期間中に「この職場は合わない」と感じた場合、求職者側から直接雇用を辞退することが可能です。

Q7. 紹介予定派遣と人材紹介の違いは何ですか?

最大の違いは雇用主です。

人材紹介は入社した時点から求人企業が雇用主となりますが、紹介予定派遣は派遣期間中の雇用主が派遣会社で、直接雇用が決まって初めて求人企業が雇用主になります。

また、紹介予定派遣は実際に働いてから採用可否を判断できる点が特徴です。

まとめ

紹介予定派遣は、求職者は入社前に職場を見極められ、企業は採用のミスマッチを防げるという双方にメリットのある採用手法です。

一方で、求職者は直接雇用が保証されているわけではない点、企業は派遣料金と紹介手数料が二重にかかる点や直接雇用後に試用期間を設けられない点など、事前に理解しておくべき注意点もあります。

自分(自社)にとって紹介予定派遣が適した選択肢かどうかは、こうしたメリット・デメリットを踏まえたうえで検討することが大切です。

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