ホーム » ニュース » 人材サービス » 派遣について » 二重派遣とは?禁止される理由・罰則・該当しないケースを解説

人材派遣を利用する企業にとって、「二重派遣」は知らないうちに踏み込んでしまいがちな違法行為のひとつです。

「関連会社が人手不足だから、うちに来ている派遣スタッフを少し手伝わせよう」——そんな善意のつもりの対応が、法律違反にあたってしまうケースは少なくありません。

本記事では、二重派遣の定義・禁止されている理由・罰則・二重派遣にならないケースまで、実際の行政処分事例も交えて解説します。

┃二重派遣とは

二重派遣とは、人材派遣会社(派遣元)から派遣先企業に派遣されたスタッフを、派遣先企業がさらに別の企業(第二の派遣先)に送り、その企業の指揮命令のもとで働かせることを指します。

三重・四重と段階が増えた状態は「多重派遣」と呼ばれますが、法的には同じ問題をはらむ行為です。

通常の労働者派遣では、次のような役割分担になっています。

📌雇用関係

派遣元(派遣会社)と派遣スタッフの間

📌指揮命令関係

派遣先企業と派遣スタッフの間

ところが二重派遣になると、派遣スタッフは雇用関係も派遣契約もない第三の企業から直接指揮命令を受けることになります。

これは厚生労働省の整理で「労働者供給」に該当する行為であり、法律で禁止されています。

二重派遣に該当するかどうかを判断する最も重要な基準は、契約書上の名称ではなく、実際に誰が派遣スタッフに指揮命令を行っているかという「就業実態」です。

┃二重派遣が違法となる法律と罰則について

二重派遣は、次の2つの法律に抵触する違法行為です。

法律内容罰則罰則の対象
職業安定法労働者供給事業を行うこと、またはその労働者を自らの指揮命令下で働かせることを禁止1年以下の懲役または100万円以下の罰金再派遣を行った企業と、再派遣を受け入れた企業の両方
労働基準法業として他人の就業に介入して利益を得ることを禁止1年以下の懲役または50万円以下の罰金手数料などの利益を得た企業(主に再派遣を行った企業)

また、二重派遣であることを知らずに受け入れていた場合は罰則の対象外とされますが、違法性を知った後も受け入れを継続すれば罰則の対象になるため注意が必要です。

刑事罰だけでなく、厚生労働大臣による業務停止命令派遣事業許可の取消しといった行政処分、さらに企業名の公表につながるリスクもあります。

※ちなみに派遣スタッフ本人が罰則の対象になることはありません。

┃二重派遣が禁止されている3つの理由

なぜ二重派遣は厳しく禁じられているのでしょうか。

背景には、派遣労働者を守るための明確な理由があります。

1. 責任の所在が曖昧になる

派遣スタッフが業務中にケガをした場合、本来は派遣元が労災の手続きを行います。

しかし二重派遣先でケガをすると、派遣元と再派遣先の間には契約関係がないため、「どの企業が責任を負うのか」が不明確になり、適切な補償を受けられないおそれがあります。

契約解除や労働条件の変更についても同様に、責任の押し付け合いが起こりやすくなります。

2. 中間搾取により賃金が減る

通常の派遣では、派遣料金から派遣元が受け取るマージンは一段階のみです。

しかし二重派遣では、派遣元から元の派遣先へ、そして再派遣先へと段階が増えるため、マージンが二重に差し引かれることになります。

結果として、派遣スタッフが実際に受け取る賃金は本来より少なくなってしまいます。

3. 労働条件が守られなくなる

雇用契約や派遣契約で定めた勤務時間、業務内容、残業の有無といった条件は、再派遣先の都合によって無視されやすくなります。

契約にない業務を強いられたり、休憩が取れなかったりするなど、派遣スタッフにとって不利益な状況が生まれやすくなるのです。

┃二重派遣が起こってしまう背景

alt="二重派遣が起きる原因と二重派遣に該当するケース”

二重派遣は「確信犯的に行われるケース」もあれば、「悪気なく起きてしまうケース」もあります。

主な原因としては、次のようなものが挙げられます。

人手不足

人手が足りない関連会社や取引先に、善意で派遣スタッフを手伝わせてしまう。

取引先との力関係

上位の取引先から依頼されると断りづらい。

知識不足・管理不足

担当者が二重派遣の定義を正しく理解していない、契約内容と就業実態の乖離をチェックしていない。

業界特性

IT・システム開発業界は下請け・再委託の構造が多層になりやすく、二重派遣が発生しやすい典型的な業界とされています。

二重派遣に該当する典型的なケース

❌派遣先A社が、受け入れた派遣スタッフを自社業務には就かせず、B社に再派遣し、B社から仲介手数料を得ている。

❌派遣先が、自社の関連会社・子会社に派遣スタッフを送り、その関連会社が指揮命令を行っている。

❌請負契約や準委任契約の体裁を取りながら、実際には発注元企業(クライアント企業)の社員が派遣スタッフに直接指示を出している。

※最後の例は「偽装請負」と呼ばれ、二重派遣の抜け道として使われがちなパターンです。

┃二重派遣にならないケース

すべての「他社での就業」が二重派遣にあたるわけではありません。

代表的に「二重派遣に該当しない」とされるのは、次のようなケースです。

① 派遣先の社員が、他社の現場でも指揮命令を行っているケース

派遣スタッフが、派遣先企業の社員と一緒に、派遣先が契約している請負先(外注先)の現場に入って作業すること自体は、直ちに二重派遣とはみなされません。

A社(派遣元):派遣スタッフと雇用契約を結ぶ派遣会社

B社(派遣先):A社から派遣スタッフを受け入れている会社

C社(請負先):B社が業務を委託している外注先

この場合、作業場所がC社であっても、実際に指示を出しているのがB社の管理者であれば問題ありません。

ポイントは勤務地ではなく、指揮命令の出どころがどこかという点です。

② 請負・準委任契約で、指揮命令権が派遣先に残っているケース

派遣先企業が、請負契約を結んでいるクライアント企業から受注した業務を、派遣スタッフに担当させることがあります。

この場合も、指揮命令を行っているのが派遣先企業であれば二重派遣にはなりません。

逆に、クライアント企業の社員が派遣スタッフに直接指示を出している場合は、偽装請負として二重派遣に該当する違法行為になります。

③ 出向(在籍型出向・移籍型出向)

出向は労働者派遣とは法的に異なる制度であるため、原則として二重派遣には該当しないとされています。

📌在籍型出向

出向元に籍を残したまま出向先で勤務。給与の支払いは出向元、指揮命令は出向先が行う。

📌移籍型出向

出向元との雇用関係を終了し、出向先とのみ雇用契約を結ぶ。

派遣とは異なって出向には契約期間の定めがなく、出向先企業との間にも一定の労働契約関係がある点が、法的な違いとして説明されることが一般的です。

注意:「出向だから安全」とは言い切れないケースもある

派遣契約で受け入れた労働者を、そのまま自社の関連会社・子会社へ「出向」という名目で動かす場合、社労士・弁護士など専門家の間で「実質的には労働者供給に該当し、違法になり得る」という指摘があります。

実際に、ある弁護士相談の事例では「協力会社から在籍出向という形式で人材を受け入れ、それを自社から派遣先へ派遣する」というスキームが検討されました。

しかし、形式上は二重派遣を回避しているように見えて、実質的には職業安定法が禁じる「労働者供給事業」に該当し、適法には実現できないと判断されています。

つまり、「出向」という言葉を使えば無条件に安全というわけではなく、

✅そもそも派遣契約で受け入れた労働者を、出向という形で動かしていないか

✅出向先で実際に誰が指揮命令を行っているか

という実態に照らして判断する必要があります。

契約の名称だけで安心せず、実際の就業状況を確認することが重要です。

┃実際にあった行政処分の事例

二重派遣は「気づかなかった」では済まされないケースがあることを示す実例として、大阪労働局による行政処分があります。

ある派遣元事業主(K社)は、システム開発事業者と労働者派遣契約を締結していたにもかかわらず、K社と雇用関係のない労働者数名を「自己が雇用する労働者」と称してシステム開発事業者に送り出し、システム開発事業者の指揮命令のもとでシステム開発業務に従事させていました。

この行為は職業安定法第44条が禁じる労働者供給事業に該当すると認定され、K社は労働者派遣事業の3か月間の停止命令と、労働者派遣事業改善命令を受けました。

加えて、厚生労働省のホームページ上で企業名が公表されています。

刑事罰の有無にかかわらず、行政処分や企業名の公表は企業の信用・ブランドイメージに直結するリスクです。

┃二重派遣を防ぐためのチェックポイント

二重派遣は、契約と就業実態の乖離を放置することで、気づかないうちに発生してしまうことがあります。

防止のためには、次のような取り組みが有効です。

✅労働者派遣契約書・個別契約書に記載された指揮命令者と、実際に指示を出している人物が一致しているか定期的に確認する

✅派遣スタッフ本人への定期的なヒアリングや、匿名でのアンケート調査を実施する

✅派遣元・派遣先・派遣スタッフの三者間でこまめにコミュニケーションを取る

✅出向や請負・準委任契約を利用する際は、指揮命令権の所在を契約前に明確にしておく

✅判断に迷う場合は自社だけで判断せず、派遣会社の担当者や社労士・弁護士などの専門家に確認する

特にIT・システム開発業界のように下請け・再委託の構造が多層になりやすい業界では、意図せず二重派遣の状態に陥りやすいため、より注意深い管理が求められます。

┃よくある質問(Q&A)

Q1. 二重派遣とは簡単に言うとどういうことですか?

派遣会社から派遣されたスタッフを、派遣先企業がさらに別の会社に送り、その会社の指揮命令のもとで働かせることです。

雇用契約も派遣契約もない企業から直接指示を受ける状態になるため、法律で禁止されています。

Q2. 二重派遣は具体的に何という法律に違反しますか?

主に2つの法律に違反します。1つは職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)です。

もう1つは労働基準法第6条(中間搾取の排除)です。

Q3. 二重派遣が発覚した場合、罰則はどのくらいですか?

職業安定法違反の場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

労働基準法違反の場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金になります。

Q4. 二重派遣で罰則を受けるのは派遣スタッフ本人ですか?

いいえ、派遣スタッフ本人が罰則を受けることはありません。

罰則の対象となるのは、再派遣を行った企業と、再派遣を受け入れた企業です。

Q5. 二重派遣だと知らずに受け入れていた場合も罰則の対象になりますか?

知らずに受け入れていた場合は、原則として罰則の対象にはなりません。

ただし、二重派遣であると気づいた後も受け入れを続けた場合は、その時点から罰則の対象になります。

Q6. 出向させると二重派遣になりますか?

出向は労働者派遣とは異なる制度のため、原則として二重派遣には該当しません。

ただし、派遣契約で受け入れた労働者を出向という名目で関連会社に動かす場合は注意が必要です。

実質的に労働者供給とみなされ、違法になり得るケースがあります。

Q7. 二重派遣を防ぐには何を確認すればよいですか?

まず、契約書に記載された指揮命令者と、実際に指示を出している人物が一致しているかを確認しましょう。

加えて、派遣スタッフ本人への定期的なヒアリングも有効です。

判断に迷う場合は、派遣会社や社労士・弁護士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。

┃まとめ

二重派遣は、職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)と労働基準法第6条(中間搾取の排除)という2つの法律によって禁止されている違法行為です。

禁止の背景には、責任の所在の曖昧化・賃金の減少・労働条件の悪化といった、派遣スタッフの不利益を防ぐという明確な目的があります。

「出向だから」「請負だから」といった契約の名称だけで安心せず、実際に誰が指揮命令を行っているかという就業実態を常に確認することが、二重派遣を防ぐ最も確実な方法です。

少しでも判断に迷う場合は、専門家に相談しながら適正な労働者派遣の運用を心がけましょう。

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