
派遣社員の活用は、人手不足の解消や専門スキルの即戦力確保として多くの企業にとって欠かせない人材戦略のひとつとなっています。
しかし、派遣労働には厳格な法的ルールが存在しており、これを知らずに運用すると法令違反による行政指導や信頼失墜につながる可能性もあります。
本記事では、2025年時点で企業が最低限押さえておくべき派遣労働に関する主要な法制度についてわかりやすく解説します。
■ 労働者派遣法とは?派遣労働の基本を知る
「労働者派遣法」は、派遣社員の就業ルールを定めた法律で、派遣元(派遣会社)と派遣先(企業)の双方に遵守義務があります。
企業が知っておくべき基本ルールは以下の通りです。
- 3年ルール
同一の派遣社員を同一の課(組織単位)で、3年を超えて継続して受け入れることは原則としてできません。
- 期間が3年に達した場合、派遣先企業は当該派遣社員に対し直接雇用を申し出る必要があります。申し出がない場合は派遣元は別の派遣先へ配属するか、直接雇用の道を検討する必要があります。
- 契約に基づく通知義務
派遣開始・契約更新・契約終了など、重要な契約変更があった場合は派遣元との連携・報告が必須です。
■ 同一労働同一賃金の原則と企業の責任
2020年4月より施行された「同一労働同一賃金」の原則は、派遣社員と正社員との間にある不合理な待遇格差を是正するための制度です。
企業は派遣元と連携し、以下の対応を取る必要があります。
- 賃金や手当の待遇差を合理的に説明できるようにする
- 派遣社員にも教育訓練や福利厚生の機会を提供する
- 待遇決定方法を文書で明示し、派遣社員に説明する義務
正社員と同様の業務に従事しているにもかかわらず説明もないまま待遇差がある場合、労働基準監督署による是正勧告を受ける可能性もあるため、十分な配慮が必要です。

■ 派遣禁止業務の把握は企業の義務
派遣の受け入れが法律で禁止されている職種が存在することをご存知でしょうか?
企業は事前に「その業務が派遣で対応可能かどうか」をしっかりと確認することが必要です。違反した場合、派遣元・派遣先双方が行政処分や法的責任を問われる可能性があります。

以下は代表的な禁止業務です。
- 警備業務(ただし常駐警備等の一部は除く)
- 医療系職種(看護師・助産師等)※例外的に紹介予定派遣は可能
- 建設業務(現場作業・工事に関する業務)
- 港湾運送業務 など
■ 日雇い派遣の原則禁止と例外規定
2012年の改正労働者派遣法により、原則として日雇い派遣(契約期間31日未満)は禁止されています。
ただし、60歳以上の高齢者や昼間学生、年収500万円以上かつ副業で派遣就業する者などは例外的に認められています。
このルールは、労働者の生活安定を目的としているため、違反すると厳しい行政指導や事業停止命令が科されることもあります。
短期での人材確保が必要な場合でも、条件の確認と適法な手続きが不可欠です。
■ 派遣先企業にも課せられる共同責任とは?
大体の問題は、派遣だから「派遣会社の責任」と思いがちですが、派遣先企業にも数々の責任と義務が課せられています。
主な共同責任
- 派遣元が厚生労働大臣の許可を得た事業者かを確認する
- 契約書(労働者派遣契約書)および就業条件明示書の保管義務
- 指揮命令系統の明確化と、違法な「偽装請負」の回避
とくに注意すべきは「偽装請負」です。
本来は派遣であるにもかかわらず、請負契約に見せかけて労働者に直接指示を出す行為は法令違反に該当し、罰則対象となります。
■ 法令順守がもたらす信頼と安心
派遣法をはじめとした法制度を正しく理解し、コンプライアンスを徹底することで企業としての社会的信頼性を高めることができます。
また、トラブルや訴訟を未然に防ぐという点でも法令遵守の姿勢は非常に重要です。
違法・不適切な運用を避けるためにも、信頼できる派遣会社と連携し、常に最新の法制度に沿った体制構築を行いましょう。
